みなさんこんにちは!湘南平塚のパーソナルジム キノスラの藤倉です。今回はこんなお悩みにお答えしたいと思います。
コーチに「お前の動きはバネがない」って言われたよ。言ってる意味もわからないしどうしたらいいんだよ〜。
バネのある動きってよく聞きますがどういう動きのことを指すか具体的に説明できますか?多くのスポーツで必須とされるこのバネような動きの正体についてお話ししていきたいと思います。
本記事の信頼性
これまでトレーナーとして多くの方のトレーニングをみてきました。アスリートとして第一線で活躍している方もいましたが、多くはスポーツを趣味で楽しむ方。その中にはもともと運動とは無縁だった人もいました。そんな方の指導で見えたことをお伝えいたします。
バネのある動きとは?
そもそもバネは、力が加えられたのちに元に戻ろうという性質を利用したもので、「弾性」とも言い換えられます。
ゴムが伸ばされて縮もうとする働きだったり、プラスチックの定規が曲げられて元に戻ろうとする働きが、バネのような動きですね。
一方スポーツ中によく聞くバネのある動きというのは体の動きがスムーズでなめらかな様子を示すことが多いです。反対にバネがない人というのはなんとなく動作がぎこちなく、力がガチガチに入っていたり、各関節の動きがバラバラな印象を受けることが多いですね。
スポーツで上達するにはこのバネのような動きというのは必須であるように思います。国際大会に出るようなアスリートで動きがぎこちない選手なんて見たことないですもんね。
ではそのバネのような動きとはどこからやってくるのか。その正体を探っていきましょう。
バネのある動きの正体とは
体の中でバネのように伸びたり縮んだりするものといえば、「筋肉」ですね。筋肉は両端が「腱(けん)」という硬い組織に変わって骨に付着しています。つまり筋肉が伸びたり縮んだりしているときは腱も一緒に伸びたり縮んだりしているわけです。
ただ筋肉と違う点は腱自体は自ら伸びたり縮んだりはできないということ。筋肉や骨に引っ張られることで伸びて、自らの持つ元に戻ろうとする力で縮むわけです。まさにバネですね。
筋肉にも伸ばされると縮む性質があります。筋肉の中には「筋紡錘(きんぼうすい)」と呼ばれる、センサーが組み込まれています。筋肉が急激に伸ばされたことを感知するセンサーです。このセンサーが反応すると、筋肉に「縮め」という指令が出されます。このことを伸張反射(しんちょうはんしゃ)と言いますが、これが筋肉の持つバネの性質です。
筋肉と腱を合わせて、「筋-腱複合体」なんて呼びますが、この筋肉と腱の両方がバネの性質を持っていて、両者がともにバネの力を発揮しているわけです。バネのある動きの正体が少しずつわかってきましたね。
バネを使うためには
何がバネの力を生み出しているのかがわかりました。ではこの力をうまく使うためにはどうしたらいいのでしょうか。
ところでみなさんは思いっきり高くジャンプしようとするとき、どんな動きをしますか?まず勢いよくしゃがみこんで、それからジャンプするはずです。
一方で、しゃがみこんだ時にすぐには飛びあがらず、一度静止してみます。いわゆる空気イス状態ですね。静止したらそのまま飛び上がってみます。先ほど勢いよくしゃがみこんで飛び上がった時ほど高くは飛べないはずです。
これが何を意味しているのか。
しゃがみこんだ際、股関節や膝、足首は関節が曲がり折り畳まれていきます。それと同時に飛び上がるために必要な筋肉はその時伸ばされることになります。すなわち、お尻、もも裏、もも前、ふくらはぎなどの筋肉はしゃがむことで一度引き延ばされる。
そしてそこからジャンプのために体は伸び上がるのですが、この時に筋肉の持つ純粋な力に加え、筋肉や腱のバネの作用が発揮されるようです。反対に一度静止して空気イス状態を経てしまうとバネの力がうまく発揮されず、筋肉の発揮する力だけで飛ばなければいけなくなるのです。
つまり、バネの力を使うと筋肉が本来持つ力に追加され大きな力が発揮できるということと、一度静止してしまうとバネの力は失われてしまう、ということがわかりました。
勢いよくしゃがんでからすぐに飛び上がるような動作のことをストレッチショートニングサイクル(SSC)を使った動きと言います。日本語では伸張-収縮回路といい、読んで字のごとく筋-腱複合体を「伸張(伸ばす)」して「収縮(縮める)」する動作の流れのことを言います。
SSCがうまく使われると、より大きく、そして速い動作を生み出すことができます。バネの力を使うためのエネルギーのことを「弾性エネルギー」と言いますがSSCではこの弾性エネルギーを溜めて発揮することで強い力発揮を可能にしているのです。
少しまとめてみましょう。
スポーツでのSSC
スポーツではより大きな力を発揮したり、より速く動くというのはとても大きなアドバンテージを生んでくれます。ですからこのSSCを利用するということは必須であると言えます。
その証拠にスポーツではこのSSCを巧みに利用した動作が確立されています。例えばボールを投げる動作。ボールを投げる時は、必ず顔より後ろに手を引いて振りかぶりますよね?その時に、胸の筋肉が引き伸ばされて、それから縮む力を利用して腕を勢いよく前に出してボールを投げるわけです。
うまくSSCが使えてない人が投げると、振りかぶりから投げるまでに勢いと筋肉を伸ばすための体のひねりがなく、SSCがうまく使われずいわゆる手投げになってしまうのです。これがバネがないと言われる人に起きていることです。
他にもジャンプする時、走っている時、切り返す時、ボールを蹴る時、ラケットを振る時などあらゆる動作でSSCが利用され、大きく速い動作を生み出しているのです。
SSCが利用される利点は大きな速い力を発揮できることにとどまらず、「疲労しづらい」ということにも及びます。筋肉の自発的な運動に加えてバネの力を追加できるために、大きな力を生み出すのにエネルギー効率がいいという側面があります。
エネルギー効率がいいということはそれだけ消費も少ないということにつながるので疲労しづらいと言い換えられます。このことは持久系のスポーツをやっている人にも有利に働くといえます。
SSCを使う条件
メリットだらけに見えるSSCですが利用するには条件があります。
まず前提として筋肉が強いかということが挙げられます。SSCでは始めに筋-腱複合体が伸ばされることで動作が開始されます。より大きな力を出すためにはより強く伸ばして弾性エネルギーを溜めなくてはなりません。
その際筋肉が伸ばされる力に耐えられなければ切れてしまいます。これが肉離れの原因になったりもするわけですが、強い力を発揮するために筋肉がその力に耐えられるように鍛えておく必要があるというわけです。
さらにSSCを使うための条件として動作の理解と習得が必要になります。
先ほど例に挙げたSSCが使えず手投げになる人というのは動作をどう行うかという理解が足りないのと、それを生み出すための各関節の動かす範囲、動かすタイミングが適切でない可能性があります。
いわゆる運動神経がいい人というのはこういったことを幼少の頃からの経験で知らず知らずのうちに習得してしまっているのです。ですからこのやたら長い文章を読んでいただけるくらい大人になったみなさんはまず動作を理解することから始め、その上で練習を積み重ね、バネのある動きを習得する必要があります。
バネのある動作を習得するには
SSCをうまく使えない人の特徴として「溜めを作る」ことが苦手ということが挙げられます。溜めを作るとは、筋-腱複合体をまず伸ばして次に来る爆発的に力を発揮する前段階を指します。弾性エネルギーを貯める局面ですね。だからSSCを習得するのにまずは大げさに溜めを作ってみることが大事です。
ジャンプする溜めであれば、しっかりとしゃがみこむ。ラケットを振るためであれば、ラケットを正面の位置から後ろにしっかり振りかぶる。
イメージできない人はまずはしゃがむということを全力で勢いよくやってみてください。椅子に座るように徐々に力を抜いていくのではなく、全力で速くしゃがんでみる。そして膝が60度を超えたあたり(だいたいです)でビタッと止める。どうでしょう?止められますか?止めた瞬間ふわっと体が浮く感じがしませんか?それがSSCの第一歩です。
次は先ほどと同じように止めた後ふわっと感じるタイミングで同時に上に飛び上がってみてください。腕を上に振ることを意識してあげるとうまくいくかもしれません。ビヨーンと飛べていつもより体が高く飛べてる感じがすればうまくいっているかもしれません。
次はラケットを振る動作をやってみましょう。
椅子に浅く腰掛け、足を地面にしっかりつけてください。手を前で組んでお祈りするようなポーズをとり、お腹にグッと力を入れてください。そのままみぞおちから上を左右どちらかに軽く振ってみてください。軽く瞬間的にです。
一瞬だけ力を発揮するようにすると、どちらかに体が向いた後、クンッと体が正面に戻ってくるはずです。これがお腹の筋肉のバネです。
今度は立って手をつけてみましょう。利き腕を横に地面と水平に突き出します。体の横です。肘は軽くまげて出来るだけ脱力していてください。先ほど座ってやったのと同様にお腹に力を入れてみぞおちから上を突き出した腕の側へ回旋します。
先ほどと同じように体が勝手に正面に戻りましたか?その時腕は少し遅れて元の位置に戻ってきたと思います。体の動きにおいていかれた腕は、胸や肩の筋肉が引き伸ばされ弾性エネルギーが溜まり、SSCが生じて腕の水平内転という動作が起こったのです。
これがラケットを振る動作やボールを投げるために使われるSSCの第一歩です。
スポーツに活かすためにバネすなわちSSCを使った動作を習得するのにもっとも適した方法は、そのスポーツの練習をすることです。スポーツにおける模範的な動作というのはすでにSSCが組み込まれた上で成り立っているからです。
ですからまずはスポーツの動作を反復し、より少ない力で大きな力を生み出す練習をしてみてください。
そしてその補助として使えるのがウェイトトレーニングです。ウェイトトレーニングは重りなどの負荷を使いながらトレーニングを行う方法ですがこれを行うことで筋肉や腱が強くなります。強い力が発揮できるのと同時に強い力にも耐えられるようになるのです。その成長があるだけでバネの動作が巧みになる人を何度も見てきました。
ウェイトトレーニングを行う過程で強い筋肉を手に入れるのとともに筋肉の使い方を学習できたのだと思います。
さらにSSCを使った動作を強調的にトレーニングする方法もあります。それがプライオメトリックストレーニングというものです。これはSSCを使う能力を向上させるために考案されたトレーニングです。ですからバネの動作を鍛えるにはもっとも適したトレーニングと言えます。その分強度は高く体に与える負担も大きいので実施には注意が必要です。
プライオメトリックスについてはコチラの記事にまとめてあります。合わせてご覧ください。
まとめ
バネのある動きについて正体が掴めたでしょうか。
スポーツではいかに大きな力を素早く発揮できるかというところに焦点が置かれます。スポーツのスキルはとても大事ですがこういった体の使い方、というものもスポーツを上達させるためには重要な項目です。
余談ですが、デコピンは腱の弾性をフルに使った動作です。指の力だけではあそこまで大きな力は出せませんよね。昔通っていたサッカークラブのコーチのデコピンがめちゃくちゃ痛かったのを思い出しました。
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